壬生戦隊タイシローン　９話








何やら探し物をしている様子の遊庵。





遊庵「ハァ…。クソ、どこ行っちまったんだ？」

辰伶「どうです遊庵様、奴の行方は掴めました？」

遊庵「いんや、ダメだ。さっきから陰陽殿中を片っ端から見て回ってんだけどよー。気を隠すのが上手い奴らしい」

螢惑「…何かあったの？」

遊庵「ああ、ちょーどいいトコに来たな螢惑。お前も手伝えよ」

辰伶「何があったかでは無かろう！陰陽殿に何者かが忍び込んだのだ。お前も探せ！」

螢惑「え…。めんどくさいからやだ。ていうかさ、わざわざ俺たちが出るまでもないんじゃない？近衛にやらせればいいのに」

辰伶「何を言う、正義の味方は細事だろうと誰よりも先に出動して人民のために戦わねばならんのだ！お前は正義を何と心得ている！正義を！」

螢惑「お前の言い分だと正義って平たく言ってパシリ」

辰伶「やかましィィィ！」

遊庵「（お前が一番やかましい…）」

辰伶「と…とにかく。お前が嫌だと言おうが俺だけは、ミブルー（※壬生ブルー）だけは探索を続けるぞ！」

遊庵「（俺、お前らがベラベラと何の甲斐もない痴話喧嘩してる今、心眼フル稼働させてターゲット探してるんだけどな…）」

螢惑「あ、そ。頑張ってね、ブルーな壬生」

辰伶「！！！（言いようの無いダメージ）」

遊庵「（ひっくり返しただけなのに一気にネガティブな雰囲気のネーミングになったな…）……おッ！お前らその辺で止めにしとけ。捉えたぞ！」

辰伶「えっ！一体どこに…」

遊庵「この近くだ。俺らに近付いてきてるみてーだぜ」

辰伶「それでは応援を呼ばなくてはなりませんね…。でもどうしましょう」

螢惑「喉が張り裂けんばかりに奇怪奇天烈奇人的な大声で『集まれェェェ！』って叫んでみたらいいと思うよ」

辰伶「（ポン）あ、それはいいな。では遊庵様、お願いします」

遊庵「俺の喉が潰れるよ！（この鬼子兄弟…！）大体何で俺なんだよお前らがやりやがれ！」

辰伶「そう言われましても、我々はここは太四老である遊庵様を立てようと思いまして…」

遊庵「それは人を立てるとは言わねぇ人柱を建てると言う！」

螢惑「ワガママだなゆんゆん、それしか方法がないんだから我慢してよ。そういえば辰伶、頼まれてた緊急用サイレンの取り付け終わったんだって？」

遊庵「それを先に言え――ッ！！！（あるじゃねぇかマトモな方法が！）早く鳴らせっつーの！」

辰伶「（まったくやかましい人だな遊庵様…）分かりました、ではスイッチを…（ポチッ）」





ほたるの光　秋の夕日　文読む月日重ねつつ　いつしか年も杉の戸を　開けてぞ今朝は　別れ行く




遊庵「…これが、何だって？」

辰伶「サイレンです」

遊庵「『ほたるの光』じゃねーか！下校のメロディだぞ！」

辰伶「曲は関係ないでしょう。音を発することによって皆が集まるというのがサイレンの本質なのですから」

遊庵「集まるどころか帰るぞみんな！どういう選曲だよお前ただ弟を自慢したいだけだろーが！」

辰伶「（ギクゥッ！）な、何をおっしゃいます…。これはその、ほたるの光に導かれてヒーローがやって来るという意図で…」

遊庵「来るか！」

吹雪「（タタタ…）おお、応援に来たぞ！」

螢惑「きたよ」

遊庵「ウソォ！？（来るなよこんなしんみりと物悲しいテーマソングで！）」

ひしぎ「ターゲットはどこですか？」

螢惑「ゆんゆんは『この近くにいる』ってだけしか言ってなかったよ」

時人「ハァ？何ソレ遊庵、僕がわざわざ来てやったんだからもう少しくらいマシな情報渡せよな。中途半端はファッションセンスだけにしろ！」

遊庵「（ピーコみたいなダメ出しされた…）いや、それより何でお前らあの曲で集まってくるワケ？」

ひしぎ「貴方は馬鹿ですか、けたたましいサイレンの音なんて鳴ったら一般眷属が怯えてパニックになるでしょう。カモフラージュですよ」

遊庵「あ…、そういうマトモな理由がちゃんとあったのか（選曲は辰伶だろうけどな…）」

螢惑「というか、こないだ会議で決まったよね」

時人「そうそう！ちゃんと覚えとけっつーの」

遊庵「そうか、会議で…って、オレ、呼ばれてねぇぞ！？」

全員「え」

吹雪「……お前ら誰か遊庵に伝えたか？」

ひしぎ「いえ、誰か言うと思って…」

時人「ボクは自分が動く気はさらさら無かったけどね」

辰伶「私はそもそも遊庵様を呼ぼうという考えすら浮かびませんでした」

螢惑「ねむい…」

全員「・・・・・・・・・・」

遊庵「（泣きたくなってきた…）」

螢惑「みんなが知ってることなのに、ゆんゆんだけ知らなかったんだね」

ひしぎ「（……！）そ、そうです。遊庵は世間知らずですね」

遊庵「世間知らず！？（なんか話が間違った方向に行ってるぞ）」

辰伶「ま…全くです。サイレンの音がほたるの光だという常識も知らないとは」

遊庵「その珍妙な常識はどこの世界の常識だ！」

吹雪「オレの世界だ！」

全員「（ええ　　　　　！）」

ひしぎ「…と、たった今吹雪が決めたそうです」

遊庵「（今かよ！）」

吹雪「俺は神なのだから俺が法律だ」

時人「てゆーか、そもそも会議があったことを知らないお前が悪いんだよ。会議の予定くらい聞かずに察しろ」

遊庵「俺はシャリア・ブルじゃねぇ！」

？？？「…おい」

ひしぎ「貴方の存在価値なんてゼロに等しいんですからそれくらい心眼使ってどうにかなさい、このラ・フランス」

？？？「お前ら…」

遊庵「ちくしょうお前らいつかギャフンと言わせてやるからな！そんでもってひしぎには愛してると言わせ…」

？？？「コントはそれまでにしろ！」

全員「！！！！！」

辰伶「な…何奴！」

？？？「お前らが先程まで探していた敵だ、忘れていたとは言わせんぞ！」

全員「（すっかり忘れてた…）」

ミゲイラ「俺の名はミゲイラ、歴史の流れを正す者だ。織田信長に天下を取らせんとする貴様らの行いは歴史に反している。成敗してくれよう！」

螢惑「なんかわかんないけど…俺達の敵らしいね」

辰伶「壬生の敵なら許してはおけん！水破七封龍　　　　！（ザバーン）」

ミゲイラ「グッ…！フン、一番手はそいつか。相手にとって不足は無……」

螢惑「魔皇焔」

ミゲイラ「熱ッ　　　　！ちょ、ちょっと待てお前ら、死合いは１対１というのが侍の基本で…」

螢惑「うん、そうだね。でも俺達、今は侍じゃなくて壬生戦隊タイシローンだから」

ミゲイラ「（戦隊！？）いや、意味が分からな……」

時人「戦隊モノの基本は多人数ＶＳ１人なんだよ。北斗七星ッ！」

ミゲイラ「ぐはッ！（６対１って…それはリンチでは…）」

ひしぎ「吹雪の邪魔をする者は生かしておきません…。いきます、白夜『斬　　　　」

時人「根ッ暗ビーム！」

ミゲイラ「グウッ！（ね…根暗な雰囲気でダメージを与えられた！？）」

ひしぎ「（勝手に技名を変えられた…。というか、根暗とは形容詞であって動詞でもないのに…）」

吹雪「おい貴様ら、ちゃんと前に決めた戦隊用の必殺技を使え！」

遊庵「もうそんなもん覚えてるワケねーだろ。次でトドメだな……たけとんぼ！」

ミゲイラ「グ…！ここまで……か…（こんな所で命尽きるとは…）」

吹雪「全く、揃いも揃って会議の内容を無視しおって。俺が手本を見せてやる！それ、ヒーリング！」

全員「え」

ミゲイラ「（パァァァァ……）…う、ん……何？俺は生き返ったのか…？まあいい、今はひとまず退却だ！（ダッシュ）」

吹雪「ああ逃げられてしまった！」

全員「アンタのせいだろーが！！（当たり前だ！）」

辰伶「何をしているのですか吹雪様！」

遊庵「敵生き返らせてどーすんだよ！」

吹雪「……って………かった…」

ひしぎ「え？何ですか？」

吹雪「だって俺だってカッコイイ必殺技が使いたかった！うぉぉぉぉ……（号泣）」

時人「・・・・・・・・・・」

辰伶「・・・・・・・・・・」

全員「（どうしよう、このじじい……）」

螢惑「終わったなら俺もう帰るよー（ひとり能天気）」




かくして壬生の平和は守られたが、さっぱり活躍した気がせず苦い気持ちと自分たちの上司への不信感だけが残ったタイシローン達であった。

無駄に長過ぎてすみません。ノリだけで書くからこういうことになるんだよ！
そして吹雪のキャラがどうしようもないじじいになってすみません。ただの私の趣味です。
本誌ではあんなにカッコつけしーなのに！（だから崩してみたくなる）
果たしてシャリア・ブルを知っている乙女はいるのだろうか…